2024(墨 / 和紙 / 額装・LED / 表示面415×577mm)
もし言葉を顕微鏡で見ることができたら、そこには形ではなく、言葉が孕む「含み」が映し出されるかもしれません。本作品は、「文化」「君が代」、そして「記憶」という三つの要素が重なり合い、複雑な層を成しています。
「文化」は、過去の経験や知識、価値観が積み重なって形成される、いわば社会の集合的な記憶です。「君が代」は、日本の文化を象徴する歌として、長い歴史の中で様々な意味を重ねてきました。そして「記憶」は、個人が経験し、心に刻み込んだ、かけがえのないものです。
1枚目のレイヤーに「文化」と記し、2枚目のレイヤーに「君が代」を鎖のように表現することで、これらの要素が私の記憶や人格の根底を支えていることを視覚化しました。しかし、文字は滲み、消えかけており、その形を保っていません。これは、私の内面が揺らいでいることを示唆すると同時に、現代の日本社会において「文化」という概念が失われつつあることを象徴しています。
「文化」の喪失は、個人がルーツを失い、自尊心を損なうことにつながります。我々が継承すべきは、過去の文化の形そのものではなく、民族としての尊厳であり、その根底にある精神ではないでしょうか。本作品は、このような問題意識を視覚的な形で表現し、読者に問いかけることを目指しています。
